マーガレット・ボンボンの日記

うつ・適応障害の治療中。1000字程度の毎日ブログ

今週のお題「爆発」より、【爆発少年。】

今週のお題「爆発」

 

爆発と聞いて一番はじめに思い出したのは、小学校低学年の頃の出来事である。

私は1年生~4年生まで児童会に通っていた。児童会はご存じの通り、帰っても家に人がおらず、学校の中で決められた時間まで過ごす場所で、私の頃は宿題をしたり、本を読んだり、外で友達と遊んだりおのおの自由にできる場所だった。15時頃に、時間がちかづくと当番の人が集合して長机を組み立てる。先生が分けてくれたおやつを班の机に運ぶ。アルミの薄っぺらいお皿だったか、2種類くらいのお菓子が用意されていた気がする。やんちゃなお兄さん達もさっさと集合して、全員そろったらいただきますをして食べ始めるのだが、Kくんのいる班だけは常に緊張感に包まれていた。

Kくんは私の3個ぐらい年上の上級生で、少しカールのついた真っ黒い髪のお兄さんだった。目が大きな二重で、鼻筋も通っていて、色も白くて頬がピンク色だったのを覚えている。体格も大きかった。本を読んでいるときの真剣な横顔を見て、「整っている顔だなぁ・・・この時ばかりは」とこども心に思ったものだった。Kくんは算数や理科が得意だけど、国語がまったくできないとどこかで知っていた。

Kくんはみんながおやつを食べ始めると少し遅れて部屋に入ってくる。ルンルンで来ることもあれば、先生にうながされてくることもあるし、だいたいは手や足をつかまえられて号泣しながらである。部屋に入った瞬間、靴下のまま雨の中へ逃走していたこともあった。今となれば彼の性質やバックグラウンドについていろいろ考えを巡らしたりできることもあると思うが、当時は私もふくめてほとんどの子がKくんの入場を固唾を呑んで見守っていた。

そう、事件はおやつの時間に起こるのである。

Kくんは、2回に1回くらいはみんなと一緒におやつを食べた。私もKくんと同じ班になったことがある。6人程度が使う長机に対面で座っておやつを食べるが、同じ班の子はおやつどころではない。Kくんに全集中である。

突如、彼はそわそわし始めるのである。これがくると合図で、みんな急いでそれぞれのアルミ皿を持って即座に立ち上がる。

「ば・・・っ・・・,爆発だぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!」

と、大声で叫びながら彼は長机に指をひっかけて豪快なちゃぶ台返しを披露するのである。わたしも初めて見た時はびっくりした。確か上級生の誰かに「お皿もってこっちおいで!」と急いで言われて手を引かれた気がする。彼のおやつは舞い上がり、クッキーやラムネのカスやらがそのへんにとっちらかり、コップに入れたお茶も飛び散って向かいの席の子の背中にかかる事もあった。お茶は他の班からもらえるので置き去りも仕方ないが、とりあえずおやつは代わりが無いので死守である。3・4年生になると要領がよくなるのか、アルミ皿とお茶のコップの両方を持って立ち上がる強者もいた。だいたいは1回で終わるのだが、Kくんの機嫌がおさまらなければ、彼は他の班を襲撃し、ぼんやりしていた他の子はひっくり返された机にひざを挟まれたりして被害をこうむっていた。そんな場合はもはや運が悪かったね・・・としか言いようがなかった。Kくんは号泣して泣き叫び、先生は怒り、不安な下級生はオロオロして、「またか」と諦めの境地の上級生がこぼれたおやつの後片付けを行う。

これがKくんとおやつを食べる時の一連の儀式だった。

今思えばなかなかカオスな空間だった。

私が周囲の空気に敏感なのは、こんな状況が常々あったことも1つの要因ではと思う。Kくんのちゃぶ台返しをする前の緊張感や精神的負担は子供ながらにすごく大きかったと今では感じる。うつでは過去にあった出来事を今の自分の視点から再確認して、当時の状況などが自分にどのような影響を与えていたかを分析することも大事な作業の一つである(と私個人は感じている)ため、ここでKくんに対して幼心にどのような気持ちを抱いていたか再認識できてよかったと思う。

彼は今何をしているのだろう。小学校卒業後は私立の中学校に通う姿をなんどか見た。理科や算数が得意だったので、もしかしたらちょっと変わったすごい研究者になっているかもしれない。